かつて古き世界には、森に混沌が、宵闇に魔が、光の下に人がありました。
たくさんの妖精の園、安息の楽園、魔界と呼ばれる場所がありました。
その中のひとつに、シェスタという国がありました。
シェスタはかつて、盟主たる魔女王様と、それを支える優しき王様の元で
絢爛たる魔法文化を咲かせ、大いに栄えた楽園でした。
しかし、大きな悲しみは突然に訪れました。
9歳の生誕式を前にした第一姫の死でした。
時を戻す事は叶わず、既に転生の輪に戻りし魂を引き戻す事も出来ず。
未来そのものを見るように、その成長を見守ってきたシェスタの人々は、
悲しみに留まり続け、夢や希望をなくしていきました。
そんな中で、シェスタの人々は禁忌に触れるのです。
今は失われた大いなる時の魔法で、有限の時を無限にすること。
過去と未来を遮断し、引き延ばされた夢の中で悲しみを忘れること。
ある月の無い夜、その王国は夢に消えたと言います。
シェスタの悲しみは悪夢を呼び、悪夢が悪夢を呼ぶ無限の闇の中で、
魔都となり果てました。
今も漂い続けるその都に近づく者は、夢に飲み込まれ消えると言います…。
・
ライラック王宮:
「こんな夜更けにどうした?ルナリア?」
「ダーナおじいちゃん…夢を見たの。」
「怖い夢かい?」
「…ううん、悲しい夢。」
「どんな夢だい?」
「よく分からないけど、みんな悲しそうなの。すごく、悲しい夢…。」
「シェスタのせいかも知れんな…あの魔都が現実に近づく周期だ。」
「しぇすた?あの、怖い昔話に出てくる?」
「ああ、悲しいお伽話だよ。さあ…おやすみ。」
「うん…。」
・
ルナリア寝室:
また、あの夢だ・・・。
みんな悲しそうな顔をしている。
何がそんなに悲しいの?
私はどうすればいいの?
みんながルナリアを悲しそうなまなざしで見つめる。
と、その中から3匹の妖精が舞い降りた。
「助けてください。」
「助けてください。このままでは、私たちは永遠に時空の狭間から逃れられない。」
「助けてください。私たちの夢に光と希望を・・・。」
「かわいそう。助けてあげたい・・・。」
「ならば、あなたもシェスタの世界へ!」
「きゃあっ。」
突然現れた手によって、ルナリアは闇の中に引っ張り込まれた。
そしてどこまで続くかわからない、真っ暗な空間をひたすら落ちていきました。