☆ プロローグ ☆

 

 

かつて古き世界には、森に混沌が、宵闇に魔が、光の下に人がありました。

たくさんの妖精の園、安息の楽園、魔界と呼ばれる場所がありました。


その中のひとつに、シェスタという国がありました。 

シェスタはかつて、盟主たる魔女王様と、それを支える優しき王様の元で

絢爛たる魔法文化を咲かせ、大いに栄えた楽園でした。 


しかし、大きな悲しみは突然に訪れました。

9歳の生誕式を前にした第一姫の死でした。

時を戻す事は叶わず、既に転生の輪に戻りし魂を引き戻す事も出来ず。

未来そのものを見るように、その成長を見守ってきたシェスタの人々は、

悲しみに留まり続け、夢や希望をなくしていきました。


そんな中で、シェスタの人々は禁忌に触れるのです。

今は失われた大いなる時の魔法で、有限の時を無限にすること。

過去と未来を遮断し、引き延ばされた夢の中で悲しみを忘れること。


ある月の無い夜、その王国は夢に消えたと言います。

シェスタの悲しみは悪夢を呼び、悪夢が悪夢を呼ぶ無限の闇の中で、

魔都となり果てました。

今も漂い続けるその都に近づく者は、夢に飲み込まれ消えると言います…。

 

 

ライラック王宮:

「こんな夜更けにどうした?ルナリア?」

「ダーナおじいちゃん…夢を見たの。」

「怖い夢かい?」

「…ううん、悲しい夢。」

「どんな夢だい?」

「よく分からないけど、みんな悲しそうなの。すごく、悲しい夢…。」

「シェスタのせいかも知れんな…あの魔都が現実に近づく周期だ。」

「しぇすた?あの、怖い昔話に出てくる?」

「ああ、悲しいお伽話だよ。さあ…おやすみ。」

「うん…。」

 

 

ルナリア寝室:

また、あの夢だ・・・。

みんな悲しそうな顔をしている。

何がそんなに悲しいの?

私はどうすればいいの?

みんながルナリアを悲しそうなまなざしで見つめる。

 

と、その中から3匹の妖精が舞い降りた。

「助けてください。」

「助けてください。このままでは、私たちは永遠に時空の狭間から逃れられない。」

「助けてください。私たちの夢に光と希望を・・・。」

 

「かわいそう。助けてあげたい・・・。」

「ならば、あなたもシェスタの世界へ!」

「きゃあっ。」

突然現れた手によって、ルナリアは闇の中に引っ張り込まれた。

 

そしてどこまで続くかわからない、真っ暗な空間をひたすら落ちていきました。